研究概要 |
本研究の目的は、急速に経済発展の進んでいる中国・太湖流域の最大河川である東〓渓川において、生物多様性の保全に向けた具体的な保全・再生手法を提案することである.平成24年度は、主に中流域に注目し、魚類多様性の評価モデルを構築したほか、河川管理者が魚類の多様性を考慮した河川改修を行うための河川工学的検討を行った。 1)現地調査:東〓渓川中流域において魚類調査及び物理・化学環境調査を実施した(18地点).魚類調査および水深,流速,底質といった物理的環境要素のほか水質(DO,水温,電気伝導度,Chl-a,栄養塩類等)を測定した。加えて、洪水時の河道特性(無次元掃流力τ*と川幅水深比B_m/H_m等)も取得した。 2)魚類多様性評価のモデルの作成:東〓渓中流域において魚類群集と環境要因の関係を一般化線形モデルにより解析した。その結果、中流域の魚類の種数は、水質や植生の繁茂等の環境要因より河道内に存在するハビタットのモザイク性に強く依存することが分かった。 3)中流域の魚類多様性を確保する河道条件の検討:上記モデルより当該中流域の魚類多様性の保全に際してはハビタットの多様性が第一に重要ということが明らかとなったため、ハビタットが多様になる条件を河川工学のパラメータから検討した.瀬・淵等のハビタットの出現傾向は、無次元掃流力τ*と川幅水深比B_m/H_mの二次元平面上で概ね捉えることが出来た。早瀬と淵はτ*が0.05以上で,ワンドはB_m/H_mが60以上の地点で出現することが示された.また,ハビタットの多様性、B_m/H_m、および無次元砂州高(砂州の発達度)の間には有意な正の相関が認められ、川幅が広くなると、地形の起伏が大きくなり、その結果としてハビタットが多様になることが示唆された。また、堰等の影響で河床が粗粒化しτ*が小さくなると川幅が拡大してもハビタットは単調となることも明らかとなった.
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