研究課題
特別研究員奨励費
同種造血細胞移植後の重篤な合併症である移植片対宿主病(GVHD)による臓器不全や血球貧食症候群(HPS)による生着不全において、組織学的な検討から炎症部位におけるマクロファージ(MΦ)数と予後が逆相関することを明らかとしてきた。今回、MΦが組織障害を惹起する機序を解明するとともに通常のデキサメサゾン(DSP)よりもMΦに対する作用が強いと予想されるパルミチン酸デキサメタゾン(DP)の効果をin vitro及びin vivoで検討した。GVHDマウスモデルを確立し皮膚MΦにおける炎症性サイトカイン及びMΦ遊走に重要と予想されるケモカイン:CCL2の皮膚間質における発現をRT-PCRにて検討した。MΦをDSPとDPで処理し、viabilityとCCL2のレセプター:CCR2に対する効果をin vitroにて検討した。GVHDマウスにDPを投与し組織学的効果を検証した。これらの実験結果をふまえ、同種移植後HPS及びGVHD症例にDPを投与し有効性と安全性も検討した。GVHDマウスの皮膚におけるMΦではTNFα,IFNγの発現が有意に増加していた。in vitroでの処理によりDPは、DSPよりも速やかかつ優位にヒトMΦのviabilityを低下させた。DP処理群では、CCR2発現およびCCL2への遊走能も有意に減弱していた。GVHDマウスにDPを投与したところ有意な病理学的改善を認めた。in vitro実験を反映して浸潤MΦもDP投与群で有意に少なかった。ヒト同種移植後HPS症例にDPを投与したところ発熱、フェリチン高値等の所見は速やかに改善し骨髄MΦも有意に減少した。生着不全も予防できた。GVHD症例においても臨床的反応が得られ皮膚MΦは著明に減少した。DP関連の合併症はなかった。活性化MΦは、移植後合併症に深く関与しており、DPはその作用を減弱させるのに有効であり、安全性も高いことが示された。病態の中心となっている標的細胞に基づく治療法の開発の第一歩となり、マクロファージが関与する難治性の合併症の治療成績改善に結びつく重要な研究成果と考えられる。
平成24年度分辞退
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