研究概要 |
日本人トップアスリートの瞬発系パワー系運動能力を規定する遺伝子多型を明らかにするため、日本人瞬発系パワー系陸上競技選手211名(国際レベル62名、全国レベル72名、地域レベル77名)および一般の日本人649名を対象として、文献検索により選出した22種の核およびミトコンドリア遺伝子多型をTaqMan法にて解析した。その結果、6種の遺伝子(ACTN3,VDR,MT-ND1,AGT,CNTFR,TRHR)の多型が瞬発系パワー系アスリートステータスと関連しており、これら6種の多型から算出した合計遺伝子型スコアは、統計学的有意に国際レベルの瞬発系パワー系アスリートステータスを予測できることが明らかとなった。しかしながら、合計遺伝子型スコアのアスリートステータスに対する寄与率は10%程度であり、現場での応用を目指す場合にはより精度を高めていく必要がある。 また、これら6種の多型の中で、最も貢献度が高かったCNTFR遺伝子多型は、CNTFR遺伝子の3側非翻訳領域(3'-UTR)に位置しており、Target Scan Humanを用いてシミュレーションしたところ、miRNA-675-5pのターゲット領域に存在することが推測された。このことから、CNTFR遺伝子多型はmiR-675-5pの結合に作用することでCNTFRタンパクの発現に影響を及ぼしていると仮説を立て、ルシフェラーゼ・レポーターアッセイを用いてこの仮説の検証を行った。その結果、miR-675-5pはCNTFR遺伝子の3'-UTRに結合することで、CNTFRタンパクの発現を制御している可能性が示されたが、解析したCNTFR遺伝子多型の有無によりmiR-675-5pの結合は影響を受けなかった。したがって、このCNTFR遺伝子多型は、miR-675-5p以外のメカニズムを介して瞬発系パワー系運動能力に影響を及ぼしていると考えられる。
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