研究概要 |
本研究は、海外の日本語教育において現代的課題とされる「適切な教材の不足」(国際交流基金,2010)を解決するために、中国の日本語教育に着目し各々の現場で学習ニーズに対応する教材開発を可能とする理論的枠組みの構築を目指し、(1)背景となる教育言説と日本語教材の現代史全体を通じた問題点の把握(中国日本語教育現代史研究)、(ll)現代中国日本語教育における日本語教科書の特徴と課題の解明(中国日本語教科書現代史研究)、(III)現行教育の課題を踏まえた学習者主体の教材開発と実践の在り方の提案(理論に基づく実践的研究)を中心的な研究課題に据え、調査・考察を行うものである。 本年度は、中国の日本語教育言説や教材の分析、各時期に教育に携わった教師と学習者へのインタビュー調査、史料調査等を通し、現代中国における日本語教育がどのような指針で行われてきたかを考察すると同時に、中国の日本語教育の学習ニーズがどのようなもので、最近の学習者主体の日本語教材の開発がどのように行われているのかについて、日本の国語教育との関わりという観点から検討を行った。 得られた研究成果は、2回の口頭発表(日本語教育学会「2012年日本語教育国際研究大会」名古屋大学、日本中国学会「第64回大会」大阪市立大学)と、4本の査読付き学術誌(『日本研究集林』2012年6月(忌第38期),夏旦大学日本研究中心/『国語教育史研究』第13号(2012年12月),国語教育史学会/『計量国語学』28巻8号(2013年3月),計量国語学会/『言語文化教育研究』第11巻(特集号「言語文化教育の思想」)(2013年3月),言語文化教育研究会,pp.70-94.)において発表された。 以上とこれまでの研究成果を包括的な日本語教科書の史的研究として博士論文にまとめ、2012年12月20日に、博士学位申請論文として提出し、審査に合格した。2013年2月19日付で博士学位(日本語教育学:早稲田大学学位記番号第6270・文部科学省報告番号甲3898号)が授与された。
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