本研究の目的は、天然資源、特に原油を産出するサハラ以南アフリカの発展途上国のマクロ経済が、国際原油価格というチャネルを通じ、国際経済や国際金融市場からどのような影響を受けているかを計量分析の手法を用いて明らかにすることである。 本年度の研究では前年度までの研究に基づき、国際原油価格がナイジェリア国内のマクロ経済に与える影響を、構造ベクトル自己回帰モデルにより分析した。また同分析を論文としてまとめたものを2012年春の日本金融学会において報告した。さらにそこで得たコメントを反映させたものを英語論文としてワーキングペーパーとするとともに、海外の学術誌へ投稿中である。なお、このナイジェリアに関する分析から派生した、ナイジェリア国内における石油燃料への補助金の問題に関してはショートペーパーをまとめ、2012年アフリカ学会において報告した。また、経済発展の途上にある産油国からの資本の流出の大きさに着目し、産油国と非産油国、およびアフリカ諸国を含む13力国における資本逃避の規定要因について、時系列パネルデータ分析を行った。さらに、産油国やサハラ以南アフリカ諸国の経済成長へ貿易相手国の経済が与える影響に焦点を当て、産油国30力国、サハラ以南アフリカ29力国に関し、時系列パネルデータを用いた分析を行った。上記のうち、特に産油国からの資本逃避と資本流出に関しては、現在天然資源への投資熱が高まるアフリカ諸国の経済について再考を促すものであることから重要であると考えられ、さらに研究を深めて発表する予定である。 また以上の研究を博士論文としてまとめ、2013年3月に博士号(経済学)を取得した。
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