研究課題/領域番号 |
11J04981
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
化学系薬学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
肥後 拓也 東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2013年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 有機合成 |
研究概要 |
Sarain Aは、地中海沿岸に生息する海綿より単離・構造決定された海洋性アルカロイドである。抗菌、殺虫、抗腫瘍活性といった幅広い生理活性に加え、高度に官能基化されたジアザトリシクロウンデカン骨格を含む特異な構造を有しており、合成化学的に非常に興味深い化合物である。我々は本化合物の効率的な合成経路の確立を目指し、研究を行った。 前年度においてすでにヨードアミド化による中心骨格の構築を達成していたが、鍵反応であるヨードアミノ化の収率および位置選択性に課題を残していた。しかし、添加剤や反応温度を最適化することで収率を著しく向上するとともに、環化の際の異性体を原料へと再生させる方法論も確立したことで、目的物を効率良く合成することが可能となった。 続いて、残す不飽和14員環部位の構築に先立って、合成経路の不斉化と短工程化をおこなった。不斉化に関しては野依不斉還元を適用することで高エナンチオ選択的に中間体を得ることができた。短工程化に関しては、それまで保護基の脱着を繰り返していた部分を、変換の順番や用いる反応を最適化することで7工程もの短縮に成功した。 最後に全合成に向けて変換を試みたが、中間体の不安定さ故に検討は困難を極めた。そこで、天然物の主幹骨格が完成した中間体からOvemanらによって報告されている合成中間体へと変換し、形式全合成を達成した。こうして文献既知のプロパルギルエーテルより33工程でsarain Aの主幹骨格を構築し、さらに3工程の変換を経てOvermanらの合成中間体へと導いた。なお、Overmanらは合成中間体を非天然型の酒石酸ジエチルより36工程で合成しているが、私は同工程数ながらアキラルな出発原料から不斉反応によって不斉点を制御して独創的なアプローチでこの中間体を合成し、Overmanに続いて二例目のSarain Aの合成経路を開発することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全合成を達成することはできなかったが、不斉化と短工程化と収率の改善に成功した。さらに、主幹骨格の構築後にOvermanの合成中間体へと導くことで、形式全合成を達成した。多くの先行研究があるにも関わらず、私の合成経路はOvermanに続く二例目であり、特筆すべきは特異な中心骨格を独創的なニトロンの分子内環化反応で効率的に構築している点である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度が終わり、天然物の主幹骨格の効率的かつエナンチオ選択的な合成を経て形式全合成を達成したため、論文投稿を目指し今後執筆活動をおこなっていく。
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