研究課題
特別研究員奨励費
リン脂質は主にグリセロール骨格に極性頭部と2本の脂肪酸が結合した構造を有する。リン脂質は極性頭部の構造の違いから、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)などの種類に分類される。リン脂質はそれぞれ結合する脂肪酸の種類が大きく異なる。この脂肪酸の多様性は「リモデリング反応」によって調節されている。しかし、リモデリング反応に関わる酵素群はこれまでほとんど同定されておらず、また、リン脂質の脂肪酸多様性はなぜ必要なのか、それが破綻するとどのような異常や病態を招くのかという問題も解明されていない。リモデリングを担う酵素が同定されていない原因として、性状のよく似た数百種類のリン脂質分子をひとつひとつ区別し、かつ網羅的に解析する手法が十分に確立されていないことが挙げられる。そこでまず私は、マススペクトロメトリーを用いた網羅的脂質解析手法の開発を行った。他分野の先生方に協力して頂き、約200種類のリン脂質を高感度に測定できる方法を開発することに成功した。この脂質測定系を用いて、生体内機能・基質特異性が不明な細胞内型ホスホリパーゼA1 (iPLA1)を解析した。その結果、iPLA1ファミリーのうち、iPLA1αとiPLA1γが脂肪酸リモデリング反応を担っていることを見出した。さらに、iPLAIを介したリモデリングがミトコンドリアの形態形成に重要であることが分かった。近年、遺伝性痙性対麻痺の原因遺伝子としてiPLA1が同定された。本研究の結果から、iPLA1欠損によるミトコンドリアの形態異常、それに伴って起こる機能異常が病態発症の原因である可能性が考えられる。
(抄録なし)
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