研究課題
特別研究員奨励費
ヒトES及びiPS由来心筋細胞がどのようにしてペースメーカー型・心房型・心室型といった多様性を獲得していくのかを、電気生理学的手法により評価解析し、その分子機構を明らかにすることを目的として研究を行った。これまで、遺伝子改変することなく心筋細胞を精製する技術がなかったため、非心筋細胞が混在した状況でのイオンチャネル評価が一般的であり、培養時期に応じたイオンチャネル発現量の変化を正確に評価することは困難であった。そこで、我々はまずミトコンドリア蛍光色素およびFACSを用いて高発現分画を回収する(Nature Methods 2011)ことでヒトES及びiPS由来心筋細胞を精製する実験を行った。しかしながらミトコンドリア蛍光色素を用いる系ではFACSを用いるため心筋精製に膨大な時間と労力を要するため、より簡便で理想的な心筋精製法の確立が必要であると考えた。そこで我々は心筋細胞における代謝の特性を利用することで、FACSを用いることなく効率的に心筋精製する方法を構築し報告した(Cell Stem Cell 2013)。その後、培養時期に応じたヒトES及びiPS由来精製心筋細胞における電気生理学的パターン変化を解明するため、微小電極法を用いて培養早期及び後期における活動電位を調べたところ、ペースメーカー型細胞が減少する傾向にあることがわかった。またパッチクランプ法にて個々の単一細胞におけるイオン電流変化を解析したところ、やはり培養早期から後期にかけてペースメーカー電流(If電流及びT型Ca電流)が低下する傾向にあることがわかった。次にそのメカニズムを調べるために、精製心筋細胞のイオンチャネルの発現量変化をQPCRを用いて解析したところ、HCNチャネルやT型Caチャネルの遺伝子発現が低下する傾向にあることがわかった。以上の結果から、ヒトES及びiPS由来精製心筋細胞が培養時期に伴い、電気生理学的に成熟化を来たすことが明らかになった。現在そのメカニズムを解明中である。
すべて 2013 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)
Cell Stem Cell
巻: 12 号: 1 ページ: 127-37
10.1016/j.stem.2012.09.013
Am J Physiol Heart Circ Physiol.
巻: 303 号: 10 ページ: 1169-1182
10.1152/ajpheart.00376.2012
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 425 号: 4 ページ: 755-61
10.1016/j.bbrc.2012.07.148
Cardiovasc. Res.
巻: 95 号: 4 ページ: 419-29
10.1093/cvr/cvs206
Stem Cell Research
巻: 6 号: 1 ページ: 83-89
10.1016/j.scr.2010.09.003
http://www.cpnet.med.keio.ac.jp/leading/treatise.html