研究概要 |
単純ヘルペスウイルスがコードするUL12はヌクレアーゼとしての働きを持つが、これは培養細胞におけるウイルス増殖に重要な役割を果たすことが示唆されている。これは、UL12欠損株接種時に野生型UL12を発現させた際にはその培養細胞における増殖性は補完されるが、ヌクレアーゼ活性消失UL12を発現させた際には補完されないという知見に基づく。しかし、本研究において実際に変異体ウイルスを作製し、Vero細胞における増殖性を比較したところ、UL12欠損株はその復帰株や野生株と比較して増殖性が約1/6,000に低下したのに対し、UL12ヌクレアーゼ活性消失株はその復帰株や野生株と比較して増殖性は低下したものの1/10程度であった。本結果より、培養細胞におけるウイルス増殖へのヌクレアーゼ活性以外のUL12の機能の重要性が初めて示された。これはUL12の未知の機能を探索するという研究目的に沿ったものであるといえる。また、in vivoにおけるUL12のヌクレアーゼ活性の重要性を検証するためにマウス脳内へ各変異体ウイルスを接種し、半数致死量を比較した。結果、UL12欠損株はその復帰株と比較して半数致死量が約1000倍上昇したのに対し、ヌクレアーゼ活性消失株はその復帰株と比較して半数致死量が約100倍上昇した。本結果より、UL12のヌクレアーゼ活性はマウスの病原性発現においては重要な役割を果たしていることが示唆された。また、昨年度までの解析によりUL12リン酸部位Xのin vivoにおける重要性が示されているのだが、本リン酸化のin vivoにおける重要性につい同様に検証を行ったところ、リン酸化部位変異体ウイルス接種時はその復帰株接種時と比較して半数致死量が約100倍上昇した。すなわち、本リン酸化はマウスの病原性発現において重要であり、新規抗ウイルス薬のターゲットとなる可能性が示された。
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