研究概要 |
琵琶湖底堆積物を用いて最終間氷期から最終氷期への移行期の気候変動を解明するため, 平成25年度は, BIW08Bコアの高精度な編年の構築と琵琶湖底堆積物が保持する情報の明確化に取り組んだ. 以下にその研究実績の概要を述べる. 過去5万年間の堆積物コアの編年は, 堆積物中に含まれる陸起源植物片(木片や葉)の放射性炭素年代と火山灰の降下年代によって構築される. しかし, BIW08Bコアには, 放射性炭素年代測定が適用できる炭素量が数mgC以上の陸起源植物片が限られ, 高分解能な編年を構築することができない. そのため, 堆積物コアから得られた気候変動指標を十分に解釈できない. そこで, 堆積物中の全有機炭素(TOC)の放射性炭素年代を使った年代測定法を考案し, その有用性に関する検討を行った. その結果, TOC含有量と放射性炭素年代のズレに負の相関があり, この関係を使いTOCの放射性炭素年代を補正することで、高時間分解能な深度―年代モデルの構築に有用な堆積年代が得られることが明らかになった. 一方, BIW08Bコアの炭酸塩の起源・生成過程等について地球化学的な考察をして, 炭酸塩の含有量と気候変動との関連性について検討した. 現状では, 気候変動の指標として炭酸塩の含有量が有効である確固たる説明は得られていなく, 炭酸塩の安定同位体比等のデータや他の気候変動指標の比較研究を行うことで, BIW08Bコアの炭酸塩含有量の変化を解釈する研究を継続して進めている. 本研究で新たに高時間分解能の深度―年代モデルが構築されれば, BIW08Bコアの生物起源シリカ含有量, 鉱物粒子の中央粒径値, 炭素含有量の高分解能なデータに炭酸塩の含有量および酸素・炭素同位体比のデータを加え, 気候変動の観点から総合的に検討することで, 東アジア地域の最終間氷期から最終氷期への移行期の気候変動の特徴の詳細が解明することが可能となった.
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