研究課題
特別研究員奨励費
前年度に引き続き、当該年度も様々なトポロジーをもつ芳香族アミンの合成とその電子物性の解明をおこなってきた。以下に具体的な成果について記す。二電子酸化時にスピン三重項が発現するテトラアザシクロファン二分子がパラフェニレンで環状に連結した構造を有する新規大環状芳香族アミンの合成に成功した。本分子の単結晶の作成に成功し、X線結晶解析によってその特異な構造を明らかにすることに成功した。電気化学測定の結果、この分子は分子内に有する6つのパラフェニレンジァミン骨格を反映し、12電子まで可逆に酸化可能であることがわかった。また多段階酸化体のスピン多重度をパルスESRを用いた電子スピン過渡章動(ESTN)法によって測定したところ、スピン五重項種までの高スピン種の存在を確認した。2つのパラフェニレンジアミンをオルトフェニレンで環状に連結した大環状分子の合成に初めて成功した。本分子においては、空間を介した相互作用結合に加え、結合を介した相互作用が存在することが予測される。この分子はイス型および舟形の二種類の構造異性体をもち、NMR測定の結果、室温において両異性体のシグナルが独立して観測された。温度可変NMRの結果、シグナル形は室温から90℃まで変化が見られず、150℃においても一部のピークは完全に融合するに至らなかったことから、この分子の骨格の高い剛直性が示唆された。単結晶X線解析から、結晶中ではすべての分子がイス型構造をとっていることが明らかになった。CV測定の結果、第一および第二酸化は共に一電子酸化であり、その電位差は342mVと大きな値を示した。また、モノカチオンの電子スピン共鳴測定の結果、ラジカルスビンは分子全体に非局在化していることが示された。これらの結果から、オルトフェニレンで連結された2つのパラフェニレンジアミン間には、アルキル鎖で架橋された分子よりも強い電子的相互作用が働いていることが示された。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (10件)
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