研究課題
特別研究員奨励費
本研究の目的は、RNA干渉を誘起する機能性核酸miRNAを末梢の固形がん組織に送達可能なリポソーム型キャリアを構築することである。miRNAは短鎖二本鎖RNAであり、その構造や物性は、RNA干渉を誘起する人工核酸のsiRNAと同等であると考えられる。そこで、比較的安価なsiRNAをmiRNAの代用とした。これまでに、優れた核酸導入活性を有する新規pH応答性脂質YSK05を開発し、肝臓において高い遺伝子ノックダウン活性を有するキャリア(YSK05キャリア)の構築に成功した。YSK05キャリアをがん組織に応用したところ、遺伝子ノックダウンは認められたものの、キャリアのがん組織内浸透性が乏しく、その効率は60%程度で飽和した。がん組織内浸透性の乏しさは物理的バリアに起因すると考え、キャリアの小型化を試み、50nmから25nm程度への小型化に成功した。がん組織における遺伝子ノックダウン効率を上昇させるためには、キャリアの核酸導入活性の向上と、がん組織内分布の改善が重要であると考えられるため、今年度はそれらに着目して研究を行った。まず、YSK05よりも優れた核酸導入活性を有する脂質の開発を試みた結果、新規pH応答性脂質YSK13の合成に成功した。YSK13を含むキャリア(YSK13キャリア)はYSK05キャリアと比較して肝臓における活性が約4倍高いことが明らかとなった。これまでの検討により、肝臓における活性とがん組織における活性は正に相関することが明らかとなっており、YSK13キャリアはがん組織において優れた活性を示すと考えられる。また、25nmの小型キャリアのがん組織内分布を評価したところ、均一的な分布を示した。また、標的がん細胞への取り込み量の増加も認められた。
(抄録なし)
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