研究課題
特別研究員奨励費
本年度の検討では、グレリン受容体であるgrowth hormone secretagogue receptor (GHSR)を欠損するマウスを用いて、加齢により減少するホルモンであるグレリンが骨格筋ミトコンドリア機能及び身体能力に与える影響を検討した。50週齢での検討で、GHSR欠損マウスはコントロールと比較し、摂餌量および体重に有意な変化を認めなかったが、骨格筋量は減少し、筋力も低下していた。マウストレッドミルで測定した持久力は、GHSR欠損マウスで有意に低下しており、骨格筋ミトコンドリア量および機能も有意に低下していた。ミトコンドリア機能制御の主要因子であるAMPK活性もGHSR欠損マウスで有意に低下していた。定量的PCRによる評価でも、ミトコンドリア生合成の制御因子であるPGC1α、Tfamの発現も低下していた。また、電子伝達系構成因子であるCOXIVやATP synthaseの発現も低下していた。一方、これまでの検討で、50週齢のマウスにグレリンの投与を行ったところ、骨格筋量および筋力の増強のみならず、骨格筋ミトコンドリア量および機能が増加し、持久力も元進することを見出している。以上から、グレリンが骨格筋ミトコンドリア制御を介して骨格筋エネルギー代謝および身体能力制御に関与している可能性が示唆された。これらの知見は、加齢人口の増加により骨格筋加齢の予防・治療が重要な医療的および社会経済的問題となっている現代において、加齢により減少するホルモンであるグレリンの補充が、骨格筋加齢の予防および治療に有効である可能性を示した点で非常に意義深いものと考えられる。
(抄録なし)
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