研究課題
特別研究員奨励費
気質・行動と関連の深い形質の個体差に影響を及ぼしている遺伝子を同定するために、欧州5力国において昨年度収集した健康なイヌ11犬種541頭の診察時のストレス状態、心拍数、心電図や血液・尿中の各種パラメーターについて、ゲノム全体をカバーした約17万個のSNPを用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。全SNPデータから個体間の遺伝的な距離を求め二次元プロットとして図示したところ、サンプリングされた国によらずおおむね犬種毎にグループ化された。しかしながら、同一国からサンプリングされた同じ犬種であっても、複数のサブグループに分類されてしまう犬種も存在した。これらのサブグループの存在は解析結果に偽陽性を生み出してしまう可能性が高いため、GWAS解析では、犬種のみならず同一犬種内に存在するサブグループについても考慮する必要性が明らかとなった。そのため、今回のGWAS解析では、1)全SNPデータを解析に含め補正するGenome-wide Efficient Mixed Model法、2)各犬種・サブグループ内で各個体の表現型値を入れ替えたデータをもとに経験的確率を求めるpermutation法、3)各犬種・サブグループについて解析しP値を統計的に統合する手法を検討した。どの手法からもほぼ同様の結果が得られたが、最も安定した結果が得られた3番目の解析手法を用いることとした。その結果、肝酵素である血清ALT値の個体差には染色体13番領域が関与し、犬種によってはALT値の個体差の約50%がこの領域によって説明可能であった。また、体高の個体差については、染色体3番領域が関連していた。この領域については、イヌのみならずヒトの身長の個人差や、ウマ・ウシなどの体高や肉量の個体差との関連が報告されており、哺乳類共通のメカニズムが存在していることが示唆された。
すべて 2013 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
動物遺伝育種研究
巻: 40 号: 2 ページ: 37-49
10.5924/abgri.40.37
10031146702