研究概要 |
kV CBCTは, 画像誘導放射線治療(IGRT : image guided radiation therapy)において欠かせないツールである一方, 計画に用いられるFan-Beam CTに比べ画質が劣化しているため, 線量計算に用いるのは困難であることが知られている. kV CBCTにおいて画質が劣化する原因の一つは, 一度に大容積が撮影されるため, kV投影画像に被写体からの散乱成分が多く含まれるためである. この散乱線の影響は, 再構成画像において, アーチファクトや画素値の不確かさを生む原因となり, 線量計算において誤差を生じる. 近年さかんに研究, 開発が進められている適応型放射線治療(ART : adaptive radiotherapy)は, 治療毎に撮影されるkV CBCTを用いて, 治療毎に変化する患者さんの臓器の移動や変形の情報を考慮した高精度な線量評価を行い, 治療計画を経時的に最適化する治療法である. 本研究では、ARTにおける更なる高精度な線量評価に向けて、kV CBCTの画質改善に取り組んだ。近年, kV CBCTの画質改善のために行われている取り組みは大きく分けて2つ挙げられる. 一つは, 散乱補正であり, もう一つは, 逐次近似再構成法の利用である. 本研究では両者を組み合わせた散乱補正アルゴリズムを構築した. 正確な散乱分布の見積もりが可能なMonte Carloシミュレーションは, 計算コストの増大が懸念される. そこで, 本研究では, 散乱補正においては, 鉛コリメータを用いた散乱成分の実測と, Klein-Nishinaの散乱公式に基づく解析的な散乱シミュレーションを相補的に組み合わせることにより, 計算コストを抑え, 簡便かつ正確に二次元検出器(FPD : Flat panel detector)上での散乱分布を取得する方法を提案した.
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