研究課題/領域番号 |
11J05811
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
考古学
|
研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
鈴木 伸哉 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2011 – 2013
|
研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
|
配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2013年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2012年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2011年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
|
キーワード | 江戸 / 鎌倉 / 木製品 / 樹種 / 年輪 / 森林資源 / 木材利用 / 産地同定 / 近世 |
研究概要 |
中世・近世の関東地方における都市住民と森林資源との交渉の歴史を、遺跡出土木製品・木材の用材分析に基づき明らかにすることを目的として研究をおこない、その成果を学会発表と学術論文、著書(分担執筆)にまとめ、公表した。 東京都内の遺跡から出土した近世初期の結物(桶・樽類)や屋根板に用いられた部材の樹種や形態を検討した。同時期に開発された木曽川・天竜川流域から大量にもたらされたサワラやヒノキが、結物や建築部材等の様々な用途に大量に用いられたことを明らかにした(「考古学ジャーナル」643)。 これまで研究が進んでいなかった遺跡出土数珠について、東京都内の近世墓地遺跡から出土した資料の材質や組成の分析に基づき、17世紀後半の江戸において用いられていた数珠の様相を明らかにするとともに、当時の数珠などの副葬品と墓地の被葬者との間には、生前の持ち物などの一定の関係が存在したと推定した(「古代」133)。 幕末期に江戸海防のために構築された品川台場の構築に用いられた木材についての検討結果の概要を、書籍に寄稿した(品川区立品川歴史館編)。樹種同定の結果、アカマツやスギなどの木材が選択的に用いられていたことが明らかとなり、文献史料から推定されていた用材を裏付けた。 都内の遺跡から出土した木材をもとに構築された約800年間にわたる標準年輪曲線に基づき、多数の木製品の年輪年代決定に成功しつつある。これによって近世の江戸における木材利用の変遷を、より詳細なスケールで解明することが可能となり、近世初期の天然林資源の過剰利用から、同中期~後期における人工林・二次林の利用への移行過程が明らかとなった。この他、年輪年代学的検討によって鎌倉の中世遺跡から出土した木製品の年代決定にも成功し、陶磁器や土器の編年に主に依拠している中世鎌倉の遺跡研究に、新たな視点に基づく研究の可能性を提示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
引き続き基礎となるデータの作成をおこなうとともに、分析によって得られた成果をまとめ、公開した。都内の複数の近世遺跡から出土した遺構構築材の樹種同定の結果をもとに天然林から人工林への資源利用の変遷について明らかにするとともに、標準年輪曲線の運用による年輪年代学的検討が軌道に乗りつつある。鎌倉市内の中世遺跡出土木製品の樹種同定と年輪年代学的検討の結果の一部を公表した。当初計画に及ばなかった部分もあるが、新規資料の増加や、予想を上回る成果を得られた部分も多く、全体として順調な進展を見た。
|
今後の研究の推進方策 |
木製品の樹種同定や年輪計測等、基礎的なデータの構築に時間がかかり、成果の取りまとめや総括の点で、期間内に達成できなかった部分もある一方、長期にわたる標準年輪曲線の構築や、新たな分析手法の創出等、今後の基盤となる成果が得られた。今後、これらの成果をもとに、長期的な視野のもとに研究を展開する予定である。
|