研究概要 |
本研究では,暗号プロトコルにおける重要な安全性である,一般化汎用結合可能性(GUC:Generalized Universal Composability)に基づく安全性に関する研究を行う.GUC安全性は,任意のプロトコルと公開鍵などの情報を共有した形で,組み合わせて実行されても損なわれず,現時点で最も強固な安全性である.そのため,オンライバンキングのようなネットワークサービスの構成要素となる暗号プロトコルには,必須の安全性である. 平成24年度は,以下の2つの目的をもって研究を行った. 1.安全なサービスに必須となる暗号プロトコルのGUC安全性検証のための知見を得ること. 2.得られた知見を基に,GUC安全性検証法の拡張を行うこと. 1つ目の目的に関連して,GUC安全なコミットメントプロトコルを提案した.コミットメントプロトコルは多くの暗号プロトコルの構成要素として利用される.この成果を通して,GUC安全なコミットメントプロトコルに必須となる性質をとらえることができた.しかし,これまでのGUC安全性の検証法では,プロトコルの記述能力が不十分であり,枠組みを拡張することが必要であることが分かった. これに基づき,2つ目の目的であるGUC安全性検証法の拡張を現在行っている.拡張の目的は,プロトコルの記述能力を高め,コミットメントプロトコルなどの多様なプロトコルを検証できるようにすることである.具体的には,2つの拡張を行う.1つ目の拡張は公開鍵などの情報を共有する処理の記述に拡張性をもたせることである.これにより,多様なプロトコルをより容易に記述できるようにした.現在,この成果に関して研究発表の準備を行っている.2つ目の拡張は検証可能な機能を増やすことである.これまで,認証の機能を検証可能にした.今後,1つ目の目的の成果によって得られた知見より,コミットメントプロトコルに必須となる性質を検証できるように拡張する予定である.
|