研究概要 |
メダカ自然突然変異体であるDaは背側体幹部が腹側化することにより、体幹部の腹側鏡像構造を示す。これまでに、Da変異体の新規アレルDa-2の挿入変異を同定し、zic1、zic4の発現異常が体幹部背側における背腹軸の形成異常の原因であるということを明らかにした。これらの成果は昨年度に東京大学との共同研究として発表した(Moriyama et al,2012)。現在は新たなテーマとして、Da変異体において背側形成異常による影響がはっきりと現れている色素細胞の発生分化についての解析を、色素形成異常変異体ml-3を用いて解析を進めた。 メダカの体表には4種類(黒、白、黄、虹)の色素胞が存在する。これらの色素胞はすべて神経堤細胞から発生分化する。細胞運命を決定するメカニズムの理解は発生学における基本的な課題の一つであり、神経堤から色素細胞への分化メカニズムは優れたモデルである。メダカは4種類の色素細胞、黒色素胞、虹色素胞、黄色素胞、白色素胞を持つ。本研究では、黄色素胞と白色素胞の運命決定に注目する。 メダカml-3変異体は、白色素細胞の数と分布に異常を示す変異体として単離された。さらにml-3では黄色素胞が完全に欠損していた。ポジショナルクローニングおよび機能阻害実験によりml-3の責任遺伝子が転写因子sox5であることが明らかとなった。sox5は神経堤細胞および黄色素胞前駆体で発現していた。野生型胚細胞をml-3胚へ移植すると、その個体では野生型細胞由来の黄色素胞が観察されたことから、Sox5は細胞自律的に黄色素胞の分化への役割を担っていることが示された。これらの結果からSox5は黄色素胞と白色素胞の運命決定スイッチとして働いていることが示唆される。
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