研究課題/領域番号 |
11J05914
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
合成化学
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中塚 宏志 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 触媒的不斉水素化 / ドナーアクセプター型二官能性触媒 / ケトン / 機構解明 / ルテニウム / 遷移金属錯体 / 置換基効果 / CH-π相互作用 / ドナーアクセプター二官能性触媒 |
研究概要 |
ケトン類の不斉水素化は最も基本的かつ重要な反応の1つであるが、未だ万能といえる触媒はない。ドナーアクセプター型二官能性機能によるカルボニル基の活性化を基軸に、配位子に立体的・電子的特性をもつ配位原子を組み入れることによって、問題解決を目指した。 交付申請書に記載した実施計画に基づき、sp^2N/sp^3NH混合系四座配位子Ph-BINAN-H-Py/Ru触媒系を用いる芳香族ケトン類の不斉水素化の機構解明をおこなった。これまでに、配位子のcis-α選択的錯体形成能を確かめ、反応のエナンチオ選択性がCH-π相互作用によるものであることが明らかとなっている。新たに速度論実験、速度式解析、重水素標識実験、速度論的同位体効果測定などをおこない、本触媒系の反応経路に関する情報を得た。その結果、本触媒系は非常に遅い触媒サイクル前段階をもち、基質阻害のある特徴的な触媒サイクルによって進行することを明らかとした。反応はごく少量生じた触媒活性種によって進行し、配位子量を金属前駆体に対して20分の1まで低減しても、反応速度を低下させること無く、高いエナンチオ選択性で反応が進行できることを示した。その際の、キラル増幅率は20,000に達する。 また、これまで当研究室で開発してきた直線性PNN型3座配位子に、オクタヘドラル錯体形成時のfac選択的配位能を賦与することを目的とし、新たにPh-BINAN-Py-PPh_2を設計し、実用的合成法を確立した。この配位子とRuCl_2(dmso)_4を用いて錯形成をおこなったところ、単一のfac-Ru錯体が定量的に得られた。3位のPh基を水素に置き換えると3種類の異性体が生じることから、3位置換基がfac選択性の獲得に有効であることが明らかとなった。得られたfac-Ru錯体を用いてピナコロンの触媒的不斉水素化を調査した結果、高い反応性・選択性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ケトン類の不斉水素化は最も重要な基本反応の1つであり、万能かつ高性能な触媒の開発研究が望まれている。 我々が開発したPh-BINAN-H-Py/Ru触媒は窒素系配位子を用いる初めての成功例であり、その機構解明をおこなった。反応経路の特徴を明らかとし、さらなる高性能化への道を拓くことができた。水素化触媒に限らず、新たな触媒設計指針を示すものとしても注目される。
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今後の研究の推進方策 |
H-BINAN-Py-PPh_2/Ru触媒系の機構解明を進めるとともに、新たに設計したPh-BINAN-Py-PPh_2/Ru触媒系において、その反応条件および基質適用範囲に関して、行列的なスクリーニングをおこなう。反応性、選択性の違いを調査し、ビナフチル3位Ph基の効果を明らかとする。速度論実験、NMR実験を始めとする機構解明研究に着手し、さらなる触媒性能の向上を狙う。特に、触媒サイクルの解明および、より触媒活性種に近いヒドリド錯体の合成が目標となろう。単離可能な錯体に関しては、分光学的手法により溶液中での、X線回折により結晶中での構造情報を獲得する。
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