研究課題
特別研究員奨励費
乳児期の発達環境において、養育者を中心とする大人の存在は大きい。大人は乳児と接するときに行為を誇張することが知られており、大きく、バリエーション豊かな動き等は「Infant-directed action(対乳児行為)」と呼ばれる。対乳児行為は、乳児の注意を引きつけ、乳児の行為学習を促すことが示唆されている。従来、こうした特徴は"対乳児行為"と"対成人行為"の比較において検証されてきた。しかし、対乳児行為が乳児の認知発達に与える影響を明らかにするためには、乳児のどのような特徴が養育者の対乳児行為を引き出すのかを検討する必要がある。本研究は、養育者と乳児の相互作用場面における養育者の行為の誇張度を定量的に解析し、乳児の物体操作能力との関連を検証することで、対乳児行為と乳児の物体操作の相互作用関係を明らかにすることを目的とした。生後6-8ヶ月と11-13ヶ月の乳児とその母親に対面して座ってもらい、玩具の遊び方(カップ重ね課題)を乳児に呈示するよう母親に教示した。その際、できるだけ自然にふるまうように教示し、声かけや玩具を乳児に手渡すことも自由にしてもらった。3 次元運動計測装置を用いて、母親が乳児に呈示したカップの動きを追跡・計測した。また、乳児がカップを重ねようとする行動を行うかどうか観察した。分析の結果、11-13ヶ月児の物体操作が、母親の行為呈示の誇張度に即時的に影響することが分かった(母親によるカップの呈示軌跡距離および軌跡バリエーションは、乳児がカップ重ねをしようとしなかったときに増加、重ねようとしたときに減少)。この結果は、母親の行為が乳児の物体操作スキルに合わせて調整される可能性を示唆する。6-8ヶ月児の物体操作は、母親の行為呈示の誇張度に影響しなかった。11-13ヶ月児と異なり、6-8ヶ月児はカップ重ねをするだけの運動スキルがない。これらを鑑みると、乳児のポテンシャル(学習可能性)が母親の即時的な行為の調整を引き起こす可能性が示唆される。
(抄録なし)
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Infant Behavior and Development
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京都大学大学院教育学研究科紀要
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Proceedings of the 2nd IEEE International Conference on Development and Learning and on Epigenetic Robotics
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