研究概要 |
原子核にΛ粒子等のハイペロンを加えることで,核構造が変化することが知られている(不純物効果)。さらに,Λ粒子が加わった原子核(ハイパー核)の構造を調べることで,Λ粒子をプローブとして元の核の構造を明らかにすることが可能である。本研究の目的は,ハイペロンによる不純物効果を明らかにすると共に,ハイパー核構造から元の核の構造・性質を解明することである。 1.Λ粒子をプローブとしたMg核の三軸非対称変形の解明 24Mgは三軸非対称変形核の候補であると長年考えられている。しかし,原子核の三軸非対称変形を実験で直接確かめることは容易ではない。そこで本研究では,25ΛMg(24Mg+Λ)ハイパー核構造の理論的予言を行い,Λ粒子をプローブとして芯核24Mgの三軸非対称変形を確かめることが可能であることを示した。具体的には,25ΛMgのp軌道状態(一粒子軌道がp軌道に励起したΛ粒子が24Mgに加わった状態)に着目し,24Mgの三軸非対称変形のためp軌道状態がΛ粒子の軌道の方向によって3つに分裂することを示した。 2.Be同位体におけるΛ粒子による核構造変化 Be同位体は2αクラスター構造を持ち,中性子数によって2α構造が変化することが知られている。そのため,Λ粒子によって核構造の大きな変化が起こると期待できる。実際、これまでの我々の研究で、12ΛBeでは,Λ粒子が加わることで基底状態のパリティが反転することを示してきた。本年度は,Be同位体におけるΛ粒子による核構造の変化を解明するため,12ΛBeに引き続き10ΛBeに着目し,Λ粒子が加わることで,第一励起状態1/2+の励起エネルギーが高くなることを理論的に示した。これは,基底状態3/2-と1/2+状態では2αクラスター構造の発達度合が異なるため原子核の変形が異なり,Λ粒子の束縛エネルギーが異なることが原因であることを明らかにした。
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