研究課題/領域番号 |
11J06944
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
創薬化学
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷野 哲也 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2011 – 2012
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | ムライマイシン / MraY / 抗菌剤 / Ugi-4成分反応 / モレキュラースキャホールディング / 天然物 / 全合成 |
研究概要 |
著者は、『既存の抗菌剤と異なる新規標的MraYを阻害する天然物ムライマイシン類(MRYs)をリードとし、全合成を基盤として確立した合成法を用いた新規抗菌剤の創成研究』を目的として研究を行った。 (1)多角的な誘導体合成への展開を容易に行うことができる合成法としてUgi-4成分反応を鍵工程としたMRY D2の初の全合成を行った。(2)MRYsのMraYに対する阻害機構は未知であったため、著者は、合成したMRY D2およびその誘導体を用いてMraY阻害活性の評価および競合阻害実験を行い、MRYsがMraYの基質のうち糖ペプチドと競合することを見出した。(3)効率的な誘導体合成には化合物とMraYが相互作用する部位、官能基の情報が必要である。そこで著者は、天然物の官能基および部分構造を欠如した誘導体を包括的に合成、活性評価し、MRYsのペプチド構造は大幅に単純化した場合でもMraY阻害活性および抗菌活性が維持されることを見出した。(4)高活性なMraY阻害剤の開発には、MRYsの活性コンホマーの探索は必須であると言える。そこで、著者はモレキュラースキャホールディング、つまり多様な配座を有する誘導体を短工程で与える合成法を見出し、それらのうちいずれの配座、置換基の三次元的配置がMraY阻害活性の発現および抗菌活性の発現に重要であるかを検討した。 以上から著者は、薬剤耐性菌に有効な新規抗菌剤開発を目的とした合成研究を行い、天然物をリードとして薬剤耐性菌を含む細菌に抗菌活性を有する誘導体を見出した。また、部分構造欠如誘導体や単純化誘導体を合成活性評価することでMraY阻害活性および抗菌活性発現に必須な置換基を見出した。さらにモレキュラースキャホールディングおよび計算科学によるファーマコホアおよび活性コンホマーの探索を行い新たな構造活性相関の知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
天然物MraYの初の全合成を達成し、誘導体展開が容易に行える基盤を整えた。また、MraYを標的とする新規抗菌剤開発のために重要となる構造活性相関の情報を得て来ている。ムライマイシン類が薬剤耐性菌に有効であることは見出されていなかったが、著者らが初めて薬剤耐性菌に有効なムライマイシン誘導体群を見出した。これら誘導体は新規抗菌剤開発のよいリード化合物となると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
タンパク質と化合物の相互作用の観察のため、STD-NMRによる解析を課題として挙げていたが、タンパク質の可溶化および機能保持が難しいと考えられ研究が進んでいなかった。今後はフランスCNRSのDr.Bouhssらと共同してSTD-NMRと相互作用解析を行っていきたい。またこれまで合成した誘導体群は市販薬に比べて合成過程が長い、あるいは構造が複雑であるためより単純な分子への変換を行っていきたい。
|