炎症応答において重要な役割を持つ転写制御因子IκB-ζは現在までの研究で、標的遺伝子プロモーター上において、TAB2やHDAC1、HDAC3と結合し、TAB2の分解を介してHDAC1、RDAC3等の転写抑制を解除し、その後の転写活性化を導くという作業仮説が得られた。そこで今回は、既に解析を進めているIκB-ζ依存的転写制御機構におけるプロモーター上のダイナミクスの解析、IκB-ζ発現依存的なTAB2分解機構の解明を行った。プロモーター上のダイナミクスの解析には、IκB-ζ、TAB2、HDAC1、3に特異的な抗体を用い、またポジティブコントロールとしてNF-κB p65サブユニットに特異的な抗体を用いてLipopolysaccaride(LPS)刺激後のRAW264.7細胞のクロマチン免疫沈降を行い、それぞれの因子のIκB-ζ標的遺伝子プロモーターへの動員について、詳細な検討を行った。結果として抗NF-κBp65サブユニット抗体を用いたクロマチン免疫沈降により、LPS刺激後90分後において、一次応答遺伝子群に属し、NF-κB標的遺伝子であるcxcl2遺伝子、またIκB-ζ標的遺伝子であるLcn2のプロモーター上へのp65サブユニットの動員が確認された。しかしTAB2、HDAC1、3に対する抗体を用いた際では、クロマチン免疫沈降による増幅されたバンドが確認されなかった。現在までの報告で、一次応答遺伝子群のプロモーター上において、LPS刺激によるHDAC1、3の動員、解離がおきることが確認されている。よってcxcl2プロモーター上でのLPS刺激によるHDAC1、3の動向が確認できるクロマチン免疫沈降法の実験条件を、使用する抗体の変更も含め、検討する必要がある。 現在までの研究でIκB-ζ依存的にTAB2が分解されることが明らかとなっている。リソソーム依存的なタンパク質分解を阻害するNH_4Clで細胞を処理した場合、タンパク量の回復がある程度確認されたため、このIκB-ζ依存的なTAB2の分解はリソソーム依存的におきることが示唆された。今後の解析では、IκB-ζ遺伝子欠損マウス由来の胎生線維芽細胞を活用し、このTAB2の分解へのIκB-ζの関与の確認が必要である。
|