研究概要 |
処女マウスに対し仔マウスを繰り返し暴露する群(高暴露群), 1回のみ暴露する群(低暴露群), 暴露しない群(暴露なし群)を作出し, 暴露から4日後に巣戻し行動試験を行った. その結果, 高暴露群の仔マウス回収潜時が他の2群よりも有意に短くなった. また, このとき, 高暴露群の視床下部内側視索前野が高活性化することが確認された. 経験獲得時(連続暴露時)に活性化した神経細胞をGFPで長期的に標識し, その後の仔マウス再暴露時に活性化した神経細胞を他の神経活性化マーカーであるzifで標識し, それぞれのタイミングで活性化した神経細胞の識別を行った結果、高暴露群においてGFPとzifで今日染色される神経細胞の割合が低暴露群、暴露なし群よりも有意に多くなった。このことから、経験獲得時に活性化した神経細胞の機能強化が生じ、その後の仔マウス刺激に対し、鋭敏に反応するように可塑的に変化することにより養育行動が活性化する可能性が示された。また、高暴露することにより、オキシトシン産生細胞の高活性化やオキシトシンの分泌の増加が確認されると共に、視床下部内側視索前野にオキシトシンアンタゴニストを局所投与することで、高暴露による巣戻し行動の促進が阻害されることが明らかになった。このことから、視床下部内側視索前野の神経細胞の機能強化にオキシトシンが作用していることが示唆された。この可能性を検証するために、仔マウスの暴露により活性化する視床下部内側視索前野の神経細胞がオキシトシン感受性を持っているか調査した。その結果、活性化する神経細胞の多くがオキシトシン受容体を持つことが確認され、仔マウス暴露により分泌されたオキシトシンが視床下部内側視索前野の神経細胞に直接作用することが示唆された。
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