研究課題/領域番号 |
11J07213
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
大域解析学
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
江夏 洋一 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 遅延微分方程式 / 感染症モデル / パーマネンス / 安定性 / Lyapunov汎関数 / Lotka-Volterraモデル / 時間遅れ |
研究概要 |
時間遅れを含む感染症モデルにおいて、McCluskey(2010)が与えたSIR感染症モデルにおけるLyapunov汎関数の構成法を、ある非線形接触項を含む遅れつきウイルス感染症モデルにおける内部平衡点の大域漸近安定性の解析に応用した。さらには、open problemとされていたSEIR感染症モデルにおける内部平衡点の大域安定性条件に関する部分解決を行った。具体的には、単調反復法(変数の上極限,下極限の評価値により構成される反復列が平衡点に収束するための係数条件を考察する方法)を適用することで、感染係数が十分に大きい場合に内部平衡点が大域漸近安定であることを示し,Beretta, Breda(2011)が与えた十分条件の改善も行った。また、Lyapunov関数を適切に構成することで、multi-groupを持つ感染症モデルの大域的力学挙動に関する成果も得た。具体的には、相異なる地域区画間の移動を考慮したSIR感染症モデルやSIRS感染症モデルにおける内部平衡店の大域漸近安定性がそれぞれ挙げられる。さらに、感受性個体群がLogistic成長に従う仮定を考慮したSIR感染症モデルにおいて、非線形接触項(特に飽和型接触項)に含まれる時間遅れがシステムのHopf分岐を引き起こすための基本再生産数に関する閾値条件を得た。具体的には、内部平衡点まわりの線型化によって得られる特性方程式の根の実部符号の変化に着目し、基本再生産数がある閾値より大きい場合に、漸近安定な内部平衡点が時間遅れの長さによって不安定化されることを示した。また、連続時間SIRSモデルに対応する、後退オイラー法によって離散化された差分方程式の解のダイナミクスに関する成果を得た。具体的には、Lyapunov関数の時間微分における対数関数項の式変形の適切な差分化に着目することによって、正値性条件を加えた方程式における内部平衡点の大域漸近安定性を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Lyapunov汎関数の構成法および単調反復法の双方を応用することで、6編にわたる研究論文の成果を得た。特に、最近得られたmulti-groupモデルにおける内部平衡点の安定性解析においては、東京大学数理科学研究科の國谷紀良博士(PD)の積極的な貢献もあり、他の感染症モデルの大域解析にも応用して得られる研究成果を引き続き投稿予定である。
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今後の研究の推進方策 |
近年、感染個体群の密度に依存する接触項における非線形関数の単調性について多くの討論がなされてきた。特に、時間遅れがない場合、接触関数が非単調であっても、内部平衡点が存在するならば常に大域漸近安定である結果が知られている。本課題において用いたLyapunov汎関数や単調反復法を、非単調な接触項をもつ感染症モデルの大域力学挙動の解析にも引き続き応用することで、基本再生産数を用いて得られる閾値原理の理論的解釈を感染症の蔓延に対する防止策策定に役立てたい。
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