研究概要 |
平成23年度は,記憶想起促進手続き(RF手続き)と一致または不一致の検出対象を用いた検査を行うことで,累犯者に対する記憶想起促進手続きの効果を検討するために実験を行なった。 具体的には,すべての参加者は模擬窃盗課題から2週間後に2回目の模擬窃盗課題を行い,さらに2週間後に検査を受けた。RF手続きとして2回の模擬窃盗課題のうちのいずれかの部屋の映像を検査前に呈示した。P300による虚偽検出では,2回の模擬窃盗課題で盗んだ品物をそれぞれ検出対象とした。その結果,参加者の刺激に対するP300振幅の最大値では,RF手続きとCIT検査が一致している条件のみにおいて,Relevant刺激とIrrelevant刺激の間に有意差が認められた。この結果から,CIT検査と一致したRFを行うことで,参加者が2回の模擬窃盗を行った場合であってもRelevantとIrrelevantの弁別可能が可能であることが示された。これに対して,CIT検査と不一致のRF手続きを行なった条件では,すべての参加者が盗んだ品物であるRelevant刺激を正しく再認できていたにもかかわらずRelevantとIrrelevantの弁別困難であった。つまり,P300によるCIT検査においてRelevantを検出するためには,認識があるだけでは不十分であることが示唆された。 本研究では,RF手続きにより,参加者はCIT検査において呈示されるRelevantについての予測が可能となり,RFと一致したRelevantに対する注意が増大したため,P300頂点振幅からの減衰が遅延したのではないかと考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた,記憶想起促進手続き(RF手続き)と一致または不一致の検出対象を用いた検査を行うことで,累犯者に対する記憶想起促進手続きの効果を検討するための実験を行い,累犯者であればRF手続きが必要であることが示唆された。さらに,これまでの先行研究においてはCIT検査では被検査者の認識の有無を検出対象としているとされていたが,認識だけでは不十分であることが本研究によって明らかになった。
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