研究概要 |
EME Systems(サンフランシスコ・米国)との共同で,現有しているレーザー雨滴計をバッテリー駆動できるようにするためにロガーの開発を進めた.またマイコンでの管理ができるように自らも開発を進めた. 東京農工大唐沢山FM(栃木県佐野市)で林外雨・林内雨・樹幹流・流量の定期観測を継続的に行った.また,FM内の一部流域(7ha)で7月末から10月にかけて行われた強度間伐に向けて,毎木調査により伐採木の材積を調べた.間伐による樹冠構造変化に伴い,降雨再分配プロセスが大きく変化する.それにより樹冠通過雨量だけでなく流域からの水流出も変化することが予想される.今後の空間的な降雨インプットを含めた流出の解析を見据えて,唐沢山FMのArcGISによる地図情報の解析を行うとともに、C++プログラムによるTOPOTUBE(等高線をベースにした地形分割)を作成した.また、等高線間隔が異なる地形情報について、TOPOTUBE作成精度などを検討した。これらの情報は、分布型水流出モデルに発展的に適応できる。また昨年度の降雨観測結果を用いて,安定同位体比を指標にして樹冠通過雨の樹冠通過過程を評価できることを示した. 特別研究員就任前に投稿していた論文の査読結果を受けて改稿し,受理に至った.この論文で,単木樹冠の下においても,樹冠通過雨量と同様に雨滴粒径分布や雨滴衝撃エネルギーも空間的にばらつくことを評価した.樹冠通過時の雨水分配プロセスを雨滴観測から推定できる可能性を示唆し,本研究課題を進めていく上で重要な前提を示した. またハワイ島での,Miconiaという侵入樹種によって引き起こされる森林荒廃問題を提起すべく,Miconia種での侵食危険性が高いことを定量的に示す論文を投稿した.異なる樹種における降雨再分配プロセスを評価する上で重要な知見となる.
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