研究課題
特別研究員奨励費
アルツハイマー病では老人斑の主要構成成分であるAβが、高度に重合・線維化した結果、脳に沈着して神経傷害を引き起こすとされてきた。しかし最近、Aβの低分子重合体(オリゴマー)が発見され、アルツハイマー病発症との関係が示唆されている。クルクミンは天然植物由来の低分子化合物であり、アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスを用いた解析によりアルツハイマー病治療効果を示すことが報告された。そこで、AβオリゴマーおよびAβ線維を試験管内で人工的に作製し、クルクミンおよびその誘導体との反応性について解析した。蛍光強度変化およびQCMを用いて解析したところ、クルクミンおよびその誘導体はAβ線維だけではなく、Aβオリゴマーとも相互作用を示した。一方、Aβ線維の指示薬であるチオフラビンTはAβオリゴマーとの相互作用を示さなかった。これらの結果より、クルクミンを利用したAβオリゴマーを標的とした治療・診断法の開発が期待される。また、今年度はクルクミンを基本骨格とした19F MR用アミロイドイメージング試薬FMeC1を新規合成し、動物実験用7テスラMR装置を用いて、アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスにおける脳内アミロイド蓄積の画像化を検討した。解析の結果、19F画像化測定では、FMeC1投与4時間後においてTg2576マウスの脳領域に強い信号が認められた。組織化学的解析の結果、FMeC1を投与したTg2576マウスの脳内アミロイド斑においてFMeC1の蛍光が観察され、その領域はフッ素MR画像において信号が認められた領域にほぼ一致していた。本研究の結果は、高磁場MR装置を用いたフッ素MR測定により、Tg2576マウスにおける脳内アミロイド沈着を検出できることを示している。しかしながら、定量解析を行うためには感度やS/N比のさらなる向上が必須であることから、今後、画像撮像条件の改善やプローブ試薬の最適化をはかり、さらに短時間でより鮮明な画像が得られるよう検討する必要がある。
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