研究課題
特別研究員奨励費
第3年度目の研究目標は、第2年度目までの研究結果(4次元・2次元場の理論の双対性の検証)を踏まえて、M理論の物理(特にMブレーンの物理)に関して、新しい側面を解明していくことであった。結果として、以下に挙げる2つのアプローチにおいて一定の進展があった。1. Mブレーンの熱力学M理論において中心的な役割を果たすのは、Mブレーン(M2ブレーンとM5ブレーン)と呼ばれる物体である。これらMブレーンのダイナミクスを理解するには、熱力学を研究すればよい。しかしながら、Mブレーン上で定義される場の理論から熱力学を議論する方法は、今まで知られていなかった。一方で、超弦理論に現れるDブレーンの熱力学を議論する新しい方法が提唱された。私はこの方法に注目し、共同研究者とともにMブレーンの熱力学の議論への応用を試みた。その結果、Mブレーンがたくさん集まってブラックブレーンと呼ばれる重力理論の解となるときには、我々が場の理論から議論した熱力学の結果と完全に一致することが分かった。従って、我々はMブレーンの熱力学を正しく議論できる新しい方法を手に入れたと考えている。2. M理論において定義可能なlarge N極限(ブレーンの枚数が多い極限)超弦理論においては、ゲージ・重力対応において't Hooft極限と呼ばれる特殊なlarge N極限が定義され、そのダイナミクスを解明するに当たって、非常に大きな役割を果たしている。ところが、M理論においては't Hooft極限を定義することはできない。そこで私は共同研究者とともに、M理論においても定義できるlarge N極限を提唱して、その極限を取ることで超弦理論とM理論のダイナミクスの関係が明確になることを示した。従って、我々は今後M理論のダイナミクスを解明していく上で、この新しいlarge N極限が非常に大きな役割を果たしてくれるものと期待している。
(抄録なし)
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すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (9件)
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