研究概要 |
平成24年度は、「プロリン分解の場」であるミトコンドリアにおけるプロリン輸送経路の存在を主に検証した。23年度までに単離ミトコンドリアが30℃においてプロリンを取り込むことから、Saccharomyces cerevisiaeにおいてミトコンドリア内膜を介したプロリン取込み系の存在が強く示唆された。ゲノム情報やこれまでの生化学的解析から、S. cerevisiaeのミトコンドリアには少なくとも38種類のトランスポーターの存在が推定されているが、機能未知のものも多い。そこで、これらの中にプロリントランスポーターがあると想定し、研究を進めている。昨年度は、候補遺伝子38種類の過剰発現株および破壊株を全て構築することに成功した。これら評価株を用い、プロリン単一窒素源における生育速度を評価したところ、全過剰発現株においてプロリンの資化能上昇はみられなかった。一方、△mirl,△pet8,△mtml,△yhml,△flxl,△ugol,△mpcl,△mpc2の各破壊株においては資化能の低下が見られた。従ってこれら遺伝子産物は、プロリン輸送や分解系酵素の機能制御に関与していると考え、解析を進めている。 トランスポーターの機能を解析する上で、タンパク質リボソームの活用は有効である。そこで、ミトコンドリアの既知のアスパラギン酸/グルタミン酸交換輸送体のAgc1を用い、実験手法の確立を試みた。まず、S. serevisiaeのAGC1過剰発現株から、ミトコンドリア画分の調製やAgc1の精製を行い、それぞれからタンパク質再構成リボソームを作製した。タンパク質のリボソームへの再構成は、CBB染色等において確認した。これらのタンパク質リボソームを用い、アスパラギン酸やグルタミン酸を輸送基質とした活性測定を試みている。今後はこれらをミトコンドリアにおけるプロリン輸送機構の解析に応用したい。 さらに、別のスクリーニングで分離した液胞型輸送体ファミリーのAvt7タンパク質について、小胞体や液胞に局在することを確認した。また、Avt7が制御する細胞内グルタミン・プロリン代謝や輸送系に関わると考えられるタンパク質の発現系を構築し、その制御機構の解析を進めることもできた。
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