研究課題
特別研究員奨励費
ファイトプラズマは昆虫媒介性の植物病原細菌であり、植物と昆虫という異なる界に属する生物に寄生するユニークな微生物である。ファイトプラズマは、植物に対して病気を引き起こす一方で、昆虫に対しては病気を誘導せず、むしろ産卵数の増加や寿命の延長などの『適応度の上昇』を引き起こす。また、ファイトプラズマの媒介昆虫であるヨコバイ(カメムシ目 : ヨコバイ科)は、共生細菌が宿主に不足する栄養素を補っている可能性が高い。したがって昆虫体内においては、「共生細菌」と「ファイトプラズマ」とがフローラ(細菌叢)を形成し、これが昆虫宿主の生命活動をサポートしていると考えられ、複雑系の例として非常に興味深い。以上をふまえ本研究では、『ファイトプラズマ・昆虫・共生細菌』の3者間のクロストークを明らかにし、ファイトプラズマが昆虫宿主の適応度を上昇させる分子メカニズムの全容の解明を目指す。昨年度および本年度は、①媒介昆虫ヨコバイ内における共生細菌の特定(→一次共生細菌としては、Sulcia muelleriとNasuia deltocephalinicola、二次共生細菌としてはWolbachiaやRickettsia、Diplorickettsia、Burkholdetiaの4種類が存在する)、②ヨコバイ体内における共生細菌の局在解析(→ヨコバイの菌細胞には、主としてS. mulleriおよびN. deltocephalinicolaが感染しており、互いに菌細胞の外側と内側とに住み分けている)、③昆虫体内における共生細菌およびファイトプラズマの診断PCR(→ヨコバイ体内でファイトプラズマが多様な細菌と共生さいていることが明かとなった)について、実験を行った。以上の結果をまとめ論文を投稿し、見事アクセプトされた。また、本年度はファイトプラズマの媒介昆虫と考えられているツマグロオオヨコバイの共生微生物叢の解析も行い、共生細菌および真菌が1種類ずつ共生していることを明らかにした。更に、ツマグロオオヨコバイ内における名微生物の菌細胞も特定し、その局在を明らかにした。以上の結果は共生細菌-ファイトプラズマ-昆虫間のクロストークを解明する上で非常に重要な基盤データと言え、これによって3者間による昆虫の適応度上昇メカニズムについて研究が飛躍することは間違いない。
1: 当初の計画以上に進展している
ヨコバイ共生細菌の特定についての論文化が達成され、更に新たにヨコバイの共生細菌も特定したことから。
(抄録なし)
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