研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、生体内物質の高度な機能から着想を得た、複数の分子認識により複数の反応を制御するダブルコントロール型人工アロステリック酵素を、酵素P450camの遺伝子組み換え体(3mD)と分子認識ポリマーの複合化という汎用性のある手法で開発することを目的とする。昨年度は、分子認識部位にスペーサーを有するビオチン、シグナルにアビジンを選定して、アビジンの認識により酵素活性が変化する、不可逆であるがよりシンプルな系での実証を試みた。すると、アビジンの認識によりタンパク質のコンフォメーション変化を誘起し、ドラスティックな活性低下を引き起こすことが可能であることが証明された。しかし、その活性抑制メカニズムは解明されていない。そこで、本年度は、活性抑制メカニズム解明の第一段階として、分子認識部位であるビオチン化合物のスペーサーを長くすることで、分子認識部位の長さが3ml)の活性に与える影響を評価した。すると、分子認識部位導入後、スペーサーであるpoly(ethylene glycol)(PEG)のユニット数が2の場合は酵素活性が保持されていたが、PEGユニット数が11とさらに長くなると酵素活性は大幅に低下した。これらのビオチン化合物と同等またはより長いPEGを3mDに導入しても酵素活性が大幅に低下したことから、ある長さ以上の分子認識部位を3mDに導入すると酵素活性が抑制されることが分かった。分子認識部位導入後に酵素活性が保持されたPEGユニット数が2のコンジュゲート体では、アビジン認識後酵素活性は低下し、アビジンに対する応答性が確認された。従って、分子認識部位導入後酵素活性を保持し、かつ標的分子認識後活性を低下させるためには、短い分子認識部位が必要であることが分かった。さらに、作製した全ての3mDコンジュゲート体に対して、活性体の割合と活性残存率の相関関係を見ると、多くのコンジュゲート体で活性抑制の原因は不活性体への変化であったが、基質の結合変化も原因となる場合があることが確認された。
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Journal of Bioscience and Bioengineering
巻: 115(印刷中) 号: 6 ページ: 639-644
10.1016/j.jbiosc.2012.12.019
巻: (掲載確定)