研究課題
特別研究員奨励費
膜ラフトはステロールとスフィンゴ脂質から形成される主に細胞膜上に存在する小さな膜ドメインであり、数多くの膜タンパク質の足場となることで、様々な細胞内反応に関与することが報告されている。最近の研究から、植物の耐病性に関与する受容体や低分子量Gタンパク質であるOsRac1などが膜ラフトに存在する可能性が報告された。しかしながら、膜ラフトがいかに植物の免疫機構を制御するかにっいては未だ明らかとなっていない。そこで本研究では、膜ラフト形成に重要であると考えられるスフィンゴ脂質2-ヒドロキシ脂肪酸を改変することで、膜ラフトとイネの耐病性との関係について明らかにしようと試みた。イネには2因子のスフィンゴ脂質脂肪酸2-ヒドロキシラーゼ(OsFAH1, OsFAH2)が存在する。RNAi法を用いてOsFAH1とOsFAH2をダブルノックダウンさせたところ、イネの2-ヒドロキシ脂肪酸を有したスフィンゴ脂質が減少することで膜ラフトが減少することを明らかにした。また、膜ラフトがイネいもち病菌耐性に必須であり、そのメカニズムは低分子量Gタンパク質OsRac1とNADPHオキシダーゼOsRbohsが病害応答時に膜ラフトに局在することによる活性酸素種(ROS)シグナリングの活性化によるものであることを示した。さらに、イネに9つ存在するOsRbohsのうちどれが病害応答性膜ラフト局在型OsRbohであるか決定するために、RNAi法を用いたノックダウン体を作製し解析した結果、osRbohBとosRbohHがイネにおける病害応答性膜ラフト局在型OsRbohであるという知見を得た。以上の結果から、スフィンゴ脂質2-ヒドロキシ脂肪酸が形成する膜ラフトは、イネ耐病性に重要なOsRaclとOsRbohB/Hの足場となることでROSの産生を促し、耐病性に寄与することを明らかとした。
(抄録なし)
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