研究概要 |
近年の圏論化を用いたモジュラー表現論の発展によって、正標数の対称群の群代数は、非自明な次数付き代数の構造を持つことが明らかになった(Brundan-Kleshchev, Invent. Math., 2011)。この次数によって、対称群のモジュラー表現論的不変量は精密化され、さらなる発展が期待されるが、まだ応用は知られていない。昨年度はこのような背景から、対称群の一般化カルタン不変量に関するKülshammer-Olsson-Robinsonの予想(Invent. Math., 2003)の次数付き版を昨年提唱した(Trans. AMS, 2014)。KOR予想そのものは上記論文を発表後にバーミンガム大のEvseev氏によって解決されたが、私の提唱した次数付き版は未解決のままである。本年度はEvseev氏と共同でこの問題に取り組み、予想の命題を素数冪から自然数へ一般化すること、そしてさらに小さい行列の予想へと還元することに成功した。また予想そのものの補強として、(クルル次元が2の)基礎環をいくつかの単項イデアル環に特殊化・局所化した場合に予想が正しいことを証明した。現在、さらなる補強を試みており、適当なところで公表したいと考えている。またこの予想のスピン版などの変種についても考察した。 柏原・ルスティックによって導入された量子群の標準基底は、量子群が対称なディンキン図から定義される場合は幾何学的な構成法から非負構造定数を持つが、非対称なディンキン図から定義される場合は必ずしもそうではない。これについてはほとんど何も知られていなかったが、私は平成23年度に数理解析研究所の大型計算機を用いた計算によってG2とC3型の量子群の場合に負構造定数に関する興味深い予想を立てるに至った。今年度はこの予想を整理し、その間の含意関係を考察した。
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