研究課題
特別研究員奨励費
申請者はこれまで、光エネルギーの有効利用を目的として、白金錯体を三重項増感剤として用いる新たな可視光駆動型の電荷分離物質を開発している。自金ジアセチリド錯体(Pt)に電子供与体(D)及び電子受容体(A)を連結したD-Pt-A系を合成し、高効率(96%)で約1μsの寿命をもつ電荷分離状態の発生に成功している。更に吸収の長波長化と高強度化を目標として、トリフェニルアミンを電子ドナー、ナフタレンジイミドを電子アクセプターとして白金ポルフィリンに連結した電荷分離システムを構築した。この系ではベンゾニトリル中、光励起により約160μs及び4msと、非常に長寿命の二成分の電荷分離状態が観測された。しかし、電荷分離状態の生成に数マイクロ秒の時間を要したためにその量子収率は低いと考えられた。そこで今回、アクセプター部に電子求引性基のトリフルオロメチル基を導入したナフタレンジイミドを設計・合成した。これを電子アクセプターとして連結することで電子アクセプター部への電子移動を促進し、電荷分離状態の生成効率を改善することにした。吸収・発光スペクトル、及びCV測定等の各種測定を行い、その基本物性を明らかにすると共に、本系がベンゾニトリル中、光励起により680ps(88%)及び6.4ms(12%)と、非常に長寿命の二成分の電荷分離状態を生成することを明らかとした。さらに、ピコ秒過渡吸収スペクトルの測定により、数ナノ秒で効率的に電荷分離状態を生成することが明らかになった。即ち、今回開発した系は高速(数ナノ秒)で電荷分離状態が生成し、生成した電荷分離状態は極めて長寿命であることを実験的に明らかにした。このような系はこれまでほとんど報告されていない理想的な系であるため、本系は色素増感太陽電池等への応用を考える上で非常に有用である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
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