本研究はBCS-BECクロスオーバー領域での光学格子中Fermi原子気体超流動ダイナミクスを記述する新たな理論的枠組みの構築を目的としている。近年、BCS-BECクロスオーバー領域におけるFermi原子気体の実験が盛んに行われ、理論的にも広く研究されている。BCS-BECクロスオーバー領域における超流動ダイナミクスを記述する理論構築のため、まずはクロスオーバー領域の一方の極限であるBEC領域について、既存のBose原子気体の超流動ダイナミクスの理論の検証を行った。特に超流動の性質をよく表す第二音波について研究を行った。 近年、非凝縮体が流体力学極限にある領域での音波の伝播の実験が行われ、第二音波の存在を示唆する観測結果が得られている。超流動体における流体力学的音波のダイナミクスを詳細に調べるためには、第一音波と第二音波を同時に観測する必要があるが、第一音波と第二音波が密度の応答として観測可能な振幅で励起するかどうかは明らかにされていないのが現状である。この実験状況下でのBose原子気体における第一および第二音波のパルス伝播のついて凝縮体と非凝縮体を同時に取り扱えるZaremba-Nikuni-Griffin(ZNG)理論を拡張し、数値シミュレーションを行った。本研究では特に、音波の凝縮体および非凝縮体における振幅の温度依存性について、詳しく議論し、第二音波の観測可能性について検証した。また、流体力学極限において、超流動の運動をよく記述する二流体モデルを用いて、音波の凝縮体および非凝縮体における振幅を線形応答理論により解析し、この解析的な結果とシミュレーションで得られた結果を比較することで、第二音波の観測が観測されることを明らかにした。
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