近年、miRNAは細胞のストレス応答に関わっていることが報告されている。miRNAを調節することで、細胞は特定のmRNAの発現を変化させてストレスに対応している可能性がある。しかし、従来の生化学的な手法による細胞集団から回収した構成因子の解析や、タンパク質の相互作用解析法では限界がある。本研究では生きた細胞内でのmiRNAの蛍光イメージング法を開発し、ストレス環境下のmiRNAの動態を解析した。 まず、3'端にCy3標識したRNA骨格のlet-7a-1 miRNA guide strandと3'端にCy5標識したRNA骨格のlet-7a-1 miRNA passenger strandを濃度比1:1で反応させ、miRNA/miRNA*duplexを調製した。それをマイクロインジェクションによりCOS7細胞の細胞質に導入した。0.5mM arseniteにより酸化ストレスを負荷して落射蛍光顕微鏡で観察したところ、Cy3が示すguide strandは細胞質に分布し、ストレス応答にともないストレス顆粒を形成した。一方、Cy5が示すpassenger strandはほぼ細胞質から消失し、このような変化は見られなかった。導入したmiRNAが機能してRISC複合体へ取り込まれること、またmiRNA複合体はストレス環境下でストレス顆粒に局在することを明らかにした。次に、miRNA前駆体であるpre-miRNAを合成して細胞内に導入した。導入されたpre-miRNAはmiRNAの生合成ルートに乗り、miRNA複合体を形成し、ストレス応答にともないストレス顆粒に局在した。さらに、蛍光退色後回復法を用いて、ストレス顆粒内のmiRNAはmRNAに結合している可能性が示唆された。
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