研究概要 |
GDP結合状態のGαの主鎖NMRシグナルの帰属を85%確立し、その成果の論文投稿を行った。また、GαのIle残基の側鎖メチル基も観測対象とし、Ile26残基中、変異体を用いた解析により、16残基を帰属した。以上の帰属に基づき、NMRシグナルの、高磁場における広幅化による強度減少を調べることにより、GDP結合状態のGαの構造平衡を調べた。 まず、野生型GαのNMRシグナルの磁場依存性を調べ、構造平衡を有する残基を同定した。次に、GαのGDP/GTP交換活性に重要な構造平衡を有する残基を同定するため、GDP/GTP交換速度が野生型の41倍に増大したT329A変異体の磁場依存性を野生型と比較し、野生型より磁場依存性が亢進している領域として、GTPaseドメインのα1ヘリックス,βシート領域(β1,β2,β3,β5ストランドおよびβ1/α1ループ),GTPaseドメインとヘリカルドメインの境界に位置するαD/αE、αF、αF/β2、およびヘリカルドメインのαE/αFを同定した。 GDP/GTP交換活性が増大したT329A変異体にて磁場依存性が亢進していた領域は、GDP/GTP交換に重要な構造平衡を有する領域である可能性が高い。β1/α1~α1,αF~αF/β2およびaD/αEはGDP結合領域である。また一方で、GTPaseドメイン上のβ1,β2,β5は、GDP結合領域へ繋がる領域である。GDP結合領域に加え、GDP結合領域へ繋がるβストランドも異なる構造と交換していることが、GDPの解離に必要な構造変化を容易にし、GDPの解離を促進するうえで重要であることが明らかとなった。また、βシート領域は、GDP結合領域とGPCR結合領域とを繋ぐ領域であり、GPCRの結合が、βシートにおける構造平衡に摂動を与えることにより、GαからのGDPの解離を促進していることが示唆された。
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