研究課題
特別研究員奨励費
近年、神経変性疾患において、原因タンパク質の構造異常とその凝集が神経変性を引き起こすという共通の発症分子メカニズムが提唱され、この凝集過程をターゲットとした創薬開発が有効と考えられている。このストラテジーに則り同定されたペプチドQBP1は、神経変性疾患の一つであるポリグルタミン(PolyQ)病の原因タンパク質に対し、凝集体形成を強く抑制し、細胞毒性を軽減することが明らかとなっている。本研究ではQBP1の低分子化、および血液脳関門(BBB)透過性キャリア分子の探索により、脳内デリバリー可能な新規凝集阻害分子を開発し、PolyQ病治療薬の開発を目指す。平成24年度は、QBP1の低分子化に必要な構造情報を得るため、異常伸長PolyQタンパク質と^<15>N標識QBP1複合体のNMR立体構造解析を行った。^<15>N標識QBP1は、^<15>N標識したチオレドキシン-QBP1融合体として調製し、チオレドキシンを除去することで得た。^<15>N標識QBP1をチオレドキシン-PolyQタンパク質融合体(Thio-Q62)に加えNMR解析を行ったところ、QBP1由来のシグナルが大きく低下したものの、フリーのQBP1と比較してスペクトル変化が観察されなかった。これは、大部分のQBP1がThio-Q62と相互作用し、大きな複合体中に取り込まれていることを示唆する結果と考えられる。現在は、より小さな複合体を形成すると予想されるThio-Q35を用い、複合体中のQBP1の立体構造を解析している。また、BBB透過性キャリア分子の探索においては、前年度に構築した細胞透過性ペプチド(PTD)ライブラリーについて、細胞内移行性、膜傷害性、およびin vitro BBBキットを用いたBBB透過性の評価を行った。その結果、比較的BBB透過性の高いPTDが得られたため、マウスを用いた脳内移行性検定に向けた準備を行っ
2: おおむね順調に進展している
平成24年度では、QBP1がPolyQタンパク質の凝集体形成を抑制する分子基盤に関し、NMRおよびカロリメトリー測定から徐々に明らかになりつつある。また、脳内デリバリーキャリア探索に関しても、in vitro BBBキットを用いたスクリーニングにより、脳内移行性の高い候補PTDが同定されている。両者のアプローチにおいて、全般的にみておおむね順調に進展している。
今後、引き続きNMR測定を行い、PolyQ蛋白質との複合体におけるQBP1の立体構造を明らかにすることで、凝集抑制に必須なQBP1構造を明らかにする。Thio-Q62を用いた場合、QBP1が大きな複合体に取り込まれてシグナルが減弱してしまうため、よりPolyQ鎖長の短いThio-Q35を用いて実験を行う。得られた構造情報をもとに、より分子量の小さな化合物を設計・合成する。また脳内デリバリーキャリア探索に関しては、得られた候補PTDの脳内移行性を動物実験により確認する。また、QBP1とのコンジュゲート体を合成し、ショウジョウバエおよびマウスに投与し、脳内移行性および凝集抑制効果等を評価する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (11件)
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