研究概要 |
昨年度までの解析によってSOL1がCLE19前駆体のプロセシングに関与することが明らかになったが他のCLE前駆体のプロセシングへの関与は不明であった。先行研究によって、動物のSOL1ホモログであるカルボキシペプチダーゼEはポリペプチドのC末端アルギニン以外にリシンに対してもプロセシング活性を持つことが知られており、SOL1も同様の酵素活性を持つと予測された。さらに、CLE19以外のCLE前駆体の中にもC末端にアルギニンまたはリシンを持つものが複数存在しており、SOL1の基質として有力であると考えられた。そこで今年度はこれらのCLEペプチドのうちCLE20, CLE21について生化学的解析を行ったところ、SOL1がin vitroでC末端アルギニンに加えてリシンも除去する活性を持ち、CLE20またはCLE21の前駆体をプロセシングする活性を持つことを明らかになった。この結果から、SOL1が植物体内において、C末端にアルギニンあるいはリシンをもつ複数種のCLE前駆体のプロセシングに関わっている可能性が示唆された。 次に、SOL1によるCLEペプチドのプロセシングが細胞内あるいは細胞外のどこで起こるかを明らかにするために、SOL1-YFPをNicotiana benthamianaで小胞体、ゴルジ体、トランスゴルジネットワーク(TGN)、エンドソームに局在する既知のオルガネラマーカーと一緒に一過的に発現させ共焦点顕微鏡で細胞内局在を観察した。その結果、SOL1-YFPは細胞内のドット状のオルガネラに局在し、TGNのマーカーとは一部が、エンドソームのマーカーとは高い頻度で共局在することが明らかになった。このことからSOL1が細胞内のエンドソームに局在し、SOL1によるCLE19のプロセシングもエンドソームで起こることが示唆された。 これらの結果をまとめた論文はThe Plant Journal誌に掲載された。
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