研究概要 |
昨年度までにin vitroにおいて、ヒト造血幹細胞から成熟赤血球を作製することに成功したが、分化誘導効率に問題があった。また、単球系細胞の分化が認められ、マラリア原虫の貧食が認められたため、マラリア原虫の感染実験に供するには、さらに高純度の成熟赤血球分化が求められていた。 ヒトに特異的に感染する熱帯熱マラリア原虫は、マウスの赤血球に、ヒトの赤血球よりも1/5程度低い効率で「侵入」するが、その後の「発育・成熟」段階で死滅する。したがって、「侵入レセプター」の解析に焦点を絞れば、マウスの赤血球を用いることが可能である。そこで今年度は、マウスより採取した骨髄由来造血幹細胞にレンチウイルスベクターを用いて、ex vivoでマラリア原虫の受容体(glycophorin A, glycophorin B, glycophorin C, basigin, complement receptor 1など)を導入し、それを骨髄破壊ドナーマウスに移植することで、高収量、高効率の遺伝子組換えマウス赤血球を作製し、ヒトマラリア原虫の感染実験を行うことを目指した。 明確に上記ヒト赤血球表面分子のみを認識し、マウスのそれを認識しないモノクローナル抗体を文献から検索し、該当するものを購入あるいは分与依頼した。該当するものが見つからなかったものに関しては、候補抗体を複数入手し検討することとした。 上記遺伝子組換え実験及び、動物実験の申請し、承認を得ることができた。 実験の承認を待って、遺伝子導入用のレンチウイルスベクターを入手し、glycophorin Aなどのヒト由来赤血球膜表面分子の発現ベクターを作製した。作製したものは培養細胞での発現を検討したが、いくつかの分子は発現が認められなかった。
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