研究概要 |
本年度は、これまでに作成したコードを用いて(1,2)パイロクロア格子および(3,4)カゴメ格子上の近藤格子模型の解析を行った。また、(5)これまでのコードを拡張し、面心立方格子上のハイゼンベルグスピン近藤格子の解析も行った。最後に、これまでの成果を論文にまとめた。 (1)スピンクラスター相の発見 : パイロクロア格子上のイジングスピン近藤格子模型の解析をさらに進め、本年度は特に強結合極限に注目した解析を行った。摂動計算に基づいた有効スピン模型、および近藤格子模型に対する解析を行い、このモデルがスピンクラスター形成を伴う中間相を生じることを示した。さらに、このスピンクラスター相がスピンホール効果を生じることを見出した。 (2)パイロクロア格子近藤格子摸型の有効スピン模型 : 上記(1)の模型に対して弱結合側に対応する有効スピン模型を解析した。そして、近藤格子模型の相図がこの模型によって半定量的に再現できることを確認した。 (3)ループ液体状態の発見 : カゴメ格子上のイジングスピン近藤格子模型について、スピン電荷相互作用がバンド幅と等しい程度の領域に注目して、モンテカルロ法を用いた解析を行った。その結果、この領域においそ、分数磁化を有し、majority spinによるループで特徴付けられる特殊な中間状態(ループ液体状態)が生じることを示した。 (4)カゴメアイス絶縁体の安定性 : 昨年度発見したカゴメアイス絶縁体の安定性を数値的に評価した。そして、カゴメアイス絶縁体相、幅広いキャント角、および3次元性にたいしても一定の安全性を有することを示した。 (5)面心立法格子における磁場中相転移 : 面心立法格子上の古典的ハイゼンベルグスピン近藤格子模型を解析した。そして、磁場中における強磁性・常磁性相転移近傍において、スピンの熱揺らぎの特異的な発達を見出した。これは、伝導電子との結合を通じて伝導特性に大きな影響を与える可能性がある。
|