研究概要 |
本研究では、都市居住域内における大気汚染現象の詳細な構造解明と予測を行う数値解析システムの開発を目的とした。そのため、計算流体力学(CFD)を応用し、乱流場での化学反応現象のモデル化を主眼に、都市街区空間内における大気汚染物質の拡散予測システムの構築を目指した。本年度は、特に下記の2つの課題に取り組んだ。 1.解析格子解像度下での濃度分散評価手法の検討 乱流モデルのLES(Large_eddy simulation)では、空間フィルタによって粗視化された基礎方程式系を解くため、解析格子よりも小さいスケールでの汚染物質濃度の不均一さの情報は失われてしまう。しかし、化学反応速度の決定には、この小スケールでの反応物質の混合度が重要となる。そこで、LESにおける二分子化学反応速度評価の高精度化を目指し、解析格子より小さいスケール(Subgrid_scale, SGS)での濃度分散の評価モデルの導入とその精度検証を行った。SGSでの乱流エネルギーと濃度分散の輸送方程式を他の基礎方程式と解く手法を採用し、昨年度実施した不活性ガスの拡散実験との比較から、導入したSGS濃度分散の評価モデルの妥当性を確認した。 2.解析格子解像度下での濃度分散が反応性汚染物質の拡散予測に与える影響の解明 1で精度検証を行った手法を用い、LESを用いた都市キャニオン内での汚染物質拡散の拡散予測に、SGS濃度分散が与える影響を検討した。まず、不活性物質の拡散解析を異なる格子解像度において実施し、同手法がSGSでの濃度分散を適切に評価できるものであることを確認した。次に、反応性物質の拡散解析に同手法を適用した。キャニオン高さに形成される混合層内でSGS濃度共分散は比較的大きくなったが、SGS濃度分散の有無による平均濃度の差は極めて小さく無視し得るものであることを確認した。 また今年度は、本研究課題の最終年度に当たるため、本研究で得られた成果に関して学術論文や学会などで発表を行った。
|