研究概要 |
平成24年度に引き続き単核タングステート/酢酸ロジウム触媒系によるヒドロシランの活性化を利用した触媒反応系の開発を行った。平成24年度においては単核タングステートのテトラブチルアンモニウム塩(((η-C_4H_9)_4N)_2WO_4)と酢酸ロジウムを触媒とすることでヒドロシランによるインドール誘導体のN-シリル化反応が効率的に進行することを見出した。反応機構の検討の結果, 単核タングステート上で安定化されたケイ素求電子種を経由して反応が進行することが示唆された。そこで平成25年度においては単核タングステート上に安定化されたケイ素求電子種を利用したヒドロシリル化反応の開発を行った。また, 本触媒系のN-シリル化能およびヒドロシリル化能を利用したヒドロシランを還元剤とした第一級アミドからの第一級アミン合成を検討した。 ケトンやアルデヒドといったカルボニル化合物を用いて反応を行ったところ, 反応は効率的に進行し対応するヒドロシリル化生成物を高収率で与えた。加えて, 本触媒系は二酸化炭素のヒドロシリル化反応へも適用可能であった。末端アルケンのヒドロシリル化反応では1位が置換されたアルカンが選択的に得られた。ベンゾニトリルを基質としたところ, ニトリルへのダブルシリル化反応が進行し対応するN,N-ジシリルベンジルアミンが高い収率で得られた。 次に, 本触媒系によるヒドロシランを還元剤とした第一級アミドからの第一級アミン合成反応を検討した。この反応は第一級アミドへのN,N-ジシリル化とジシロキサンの脱離によるニトリルの生成とニトリルのダプルヒドロシリル化による2ステップで進行することが知られている。実際に, ((η-C_4H_9)_4N)_2WO_4と酢酸ロジウムを触媒としてベンズアミドの還元反応を行ったところ, 対応するN,N-ジシリルベンジルアミンとN-シリルベンジルアミンが95%収率で得られた。これらのシリル化生成物はフッ化テトラブチルアンモニウムによる加水分解反応によりベンジルアミンに変換可能であった。
|