研究課題/領域番号 |
11J09152
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
医療系薬学
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2012年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | トランスポーター / 蛍光物質 / 硫酸抱合体 / ステロイド / アレルギー |
研究概要 |
前年度の研究結果より、sulforhodamine B(SR-B)を輸送するSST1の機能解析に取り組んだ。まず、Xenopus oocyteを用いたSST1発現系におけるestrone sulfateの排出輸送について検討した。その結果、SST1介在性の排出が確認できたものの、その活性は受動拡散と同じ程度であった。細胞系においてSST1は主に小胞体に局在することが確認されていることから、Xenopus oocyte系においても細胞膜にほとんどソーティングされず、細胞外排出量が期待した以上に見られなかったのでないかと考えられる。 次に、SST1のmRNAの組織分布をreal time PCRで検討した。その結果、腎臓で最も高く、続いて胎盤、精巣上体に多く発現が確認された。SST1はhousekeeping geneであることが報告されていることから、ユビキタスな発現分布が予想されたが、その組織間における発現量に大きな違いが見られた。 以上の結果より、SST1の生理的機能について次のように考えられる。体内に存在するエストロゲンなどのステロイドホルモンの多くは血液中に硫酸抱合体のかたちで存在するが、それ自体はエストロゲンレセプターに結合できないため、生理活性を示すには細胞内で硫酸抱合を外す必要がある。その硫酸抱合を外すSTS(steroidal sulfatase)は小胞体膜にのみ分布するが、STSの基質結合部位はluminal側(小胞体内腔側)にあるため、小胞体膜の透過が必須となる。SST1は小胞体内にステロイドホルモンなどの硫酸抱合体を輸送することが考えられることから、ステロイドホルモンが豊富に存在する胎盤や精巣上体において、その恒常性の維持にSTSと協調し重要な役割を果たしていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SST1の機能解析に取り組み、硫酸化エストロゲンを取り込むトランスポーターとの共発現系において排出輸送活性を見出すことができたが、SST1単独発現系において直接的な硫酸化エストロゲンの輸送活性を明確に示すことはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
SST1は、ステロイドの豊富な臓器である胎盤や精巣上体において多く発現していることが示されたことから、SST1が生体内においてステロイド濃度の恒常性を制御していることが考えられる。 今後は、SST1の生体内での機能的役割をより明らかにしていく予定である。ステロイドの恒常性の破綻により、乳がんなど様々な病態の発症に関わることが知られている。SST1の機能をさらに明らかにし、SST1を標的としたステロイド硫酸の輸送を制御することが出来れば、ステロイド恒常性の破綻により発症する疾患に対しての新薬を、見出すことが出来るのではないかと期待される。
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