研究概要 |
本研究では計算代数的解析・幾何的解析を通じ,離散的構造であるperiodicグラフ上で,ナノテクノロジにおける結晶表面上再配置問題など現実の問題へ応用を持つようなアルゴリズムを構成することを目的としている.本年度の研究目的はこれまで明らかにされていなかった一般のperiodicグラフのl1埋め込みに関する研究を行い,アルゴリズムを設計するとともに,問題そのものの計算複雑性を明らかにすることであった. この問題に取り組む上で,本年度はまずEonによって提案されているgeodesic fiberと言う概念と11埋め込みで重要な概念であるconvexityとの関連に触発され,geodesic fiberを用いたperiodicグラフ上座標系を提案し,l1埋め込みとの関係と,結晶表面上再配置問題のための高速アルゴリズムへの応用を研究した,この結果,l1埋め込み可能性の十分条件を一つ発見し,また多くの結晶上で高速アルゴリズムが可能であることを示した.この成果は論文"Geometrical treatment of periodic graphs with coordinate system using axis-fiber and an application to a motion planning"にまとめ,国際会議The 9th International Symposium on Voronoi Diagrams in Science and Engineeringに採択された. 続いてこの成果をより深める形で一般のl1-rigidな二次元periodicグラフのl1埋め込みのための指数時間アルゴリズムを設計した.Periodicグラフのl1埋め込みの計算複雑性に関しては,クラスNPに所属することは分かったものの,NP_完全であるかどうか,すなわちP=NPでない限り多項式時間アルゴリズムが出来ないことは解明できなかった.解明を急ぎたい. 計算量の観点に関する成果は上の通りであるが,アルゴリズム設計による理論的な応用として,l1-rigidなl1埋め込み可能periodicグラフが,昨年度periodicグラフ上最短路問題のための高速アルゴリズムが設計可能であることの十分条件として提案した組合せ的条件"コヒーレント"を満たすことを示した.この点も併せ,昨年度の成果を論文"A strongly polynomial time algorithm for the shortest path problem on coherent planar periodic graphs"にまとめ,国際会議The 23rd International Symposium on Algorithms and Computationに投稿・採択された.この論文は高い評価を受けることが出来,the best student paper awardsを受賞した.
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