研究課題/領域番号 |
11J09356
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
分析化学
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
森作 俊紀 東京理科大学, 総合化学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2011 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2013年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2012年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2011年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 蛋白質 / 光学活性 / 立体構造 / ヘテロダイン増強 / 動的粘弾性 / 細胞 / 光圧 / パワースペクトル / 水和 / 振動分光 / 水和フィルム / キラリティー / 二次構造 / 振動円二色性 |
研究概要 |
振動円二色性(VCD)分光法を水環境中のAβ40とAβ42の微細な構造差異の検出に応用した。Aβ42、Aβ40それぞれの水溶液を計測用基板に滴下し、N2乾燥させることで水和フィルムをそれぞれ作成した。蛋白質水溶液をフィルム化させることで、膨大なバルク水の吸収を防ぐことができ、蛋白質選択的な信号を得ることができる。VCDスペクトルでは、Aβ40は1630cm-1付近に右円偏光活性を有するアミドIバンドが観測された。一方、Aβ42では同波数位置に反対の極性、つまり左円偏光活性を有するアミドIバンドが観測された。その波数位置からAβ40とAβ42はどちらも主にβシート構造を形成しているが、それぞれの二次構造は逆の光学活性を有していることを初めて明らかにした。さらに、蛋白質二次構造の光学活性の研究に加え、ヘテロダイン増強を用いたレーザー誘起表面顕微鏡という新しい装置の開発にも着手した。その装置は、光の圧力を利用して非接触にμmスケールの試料の動的粘弾性特性が計測可能という特徴を有している。その装置を開発し、細胞1個の粘弾性計測に適用した。典型的な細胞骨格を有する繊維芽細胞のパワースペクトルから、細胞骨格の一種である微小管が細胞膜の弾性に寄与していることを初めて明らかにした。従来、微小管は細胞内での物質輸送のレールとしての役割が示されてきたが、初めて細胞膜のレオロジーへの寄与が明らかになった。さらに、大きさが1μmの細胞内小器官である芽胞と芽胞を形成する枯草菌細胞とのパワースペクトルの差異を検出した。そのことから、開発した顕微鏡を用いて1μmの大きさの試料が計測できることが実証でき、かつ従来の原子間力顕微鏡フォースカーブ計測のような接触法では原理的に不可能であった細胞内に埋もれた小器官の粘弾性計測への道を拓いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
振動円二色性(VCD)分光法を用いて、水環境中のAβ40とAβ42の微細な構造差異の検出に適用し、それぞれの二次構造はβシート構造を主に形成しているにも関わらず、逆の光学活性を有していることを明らかにした。 さらに、ヘテロダイン増強を用いたレーザー誘起表面顕微鏡という新しい装置を開発し、細胞1個の粘弾性に対する細胞骨格の寄与や、細胞小器官の粘弾性を明らかにした。これらの成果に対して、3報の論文を投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
VCD分光法で明らかになった水環境中のAβ40とAβ42の二次構造がもつ逆の光学活性の構造起源に関して、分子シミュレーションを併用し、その構造を同定する。さらに、新しく開発したヘテロダイン増強を用いたレーザー誘起表面顕微鏡に対して、顕微ラマン計測やヘテロダイン増強旋光度計測を組み合わせることにより、対象とする細胞小器官を構成する分子の化学情報や蛋白質の光学活性の違いに基づく立体構造情報の同時取得を目指す。
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