研究課題
特別研究員奨励費
【概要】本研究では、通常の赤外分光法では解析の困難な、振動数の近接したピークを帰属するための新たな赤外分光法の開発と生体分子への応用を目指した。昨年度末の時点では、アニリンを用いてこの新しい分光法の有用性を検討したが、理論計算との定量的な一致は達成されなかった。しかしながら、本年度はじめに実験条件と理論パラメータの最適化を行ったところ、理論計算が実験値を見事に再現した。そこで本年度はさらに、この手法を生体分子の一つであるグアノシン(Gs)へと応用した。【Gsの構造決定の背景】Gsは核酸塩基グアニンに糖リボースが結合したヌクレオシドである。これまで孤立気相系においてグアニン類の構造を決定する試みは多くなされてきたが、グアニン塩基には多くの互変異性体が存在するため、それらをすべて区別することは困難であった。特に一つのOH基を持つenol体のGsには、そのOH基の配向により区別される2つの異性体が存在するが、このOH基の配向は赤外スペクトルにほとんど影響を与えないため、従来法では原理的に解析が困難である。一方、OH基の配向のみの異なるこれら二つの異性体はその電子励起寿命が10000倍以上も異なることが示唆されていることから、このOH配向の実験的解析は極めて重要である。【結果】本研究で開発した分光法をGsに適用したところ、多くの振動モードのうち、少なくとも2つの振動モードでは実験値と計算値が精度よく一致することが確認された。この結果はOH基の配向を決定するのに十分であるが、今後その他の振動モードについても本手法を適用し、全ての振動モードにおいて理論値と実験値が一致することを確認する予定である。これにより、本手法の信頼性と有用性を広く世界にアピールできると考える。
(抄録なし)
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