研究課題
特別研究員奨励費
細孔性ネットワーク錯体は結晶であるにもかかわらず、その細孔内は分子が移動性や反応性を有する擬溶液的環境であるという特長を有するため、細孔性ネットワーク錯体内での反応が近年大きな注目を集めている。しかしながら、最先端の研究ですら"溶液系と同様の反応が結晶内でも進行した"という程度であるのが現状である。本研究では、細孔性ネットワーク錯体内の錯体細孔空間を、溶液化学では達成困難な高度に制御された反応場として展開することを目指す。今年度は前年度に引き続き、パラジウム活性中心を介した炭素-ハロゲン結合生成反応におけるパラジウム活性中心の構造変化に着目した。本反応は、通常のPd(II)/Pd(0)による機構のみならず、Pd(IV)/Pd(II)による機構も提唱されており、機構的観点から特に注目を集めている反応系である。前年度までに、この反応を細孔性結晶内で行い、反応過程を単結晶X線構造解析することで、反応時にPd(II)鍵中間体が生成していることを直接観測することに成功している。そこで今年度は、このPd(II)鍵中間体から最終生成物に至る過程の直接観測を行い、結晶内でPd(II)/Pd(0)の還元的脱離過程によって反応が進行する過程を直接観測することに成功した。以上、本研究によって、細孔性ネットワーク錯体内の錯体細孔空間が、反応機構に対して、溶液化学では得ることの出来ない直接的な知見が得られる反応場として利用できることを示すことができた。
(抄録なし)
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