研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、非線形力学系理論を用いて全身動作の知覚-運動協調ダイナミクスの解明を目的とした。これまでの知覚-運動協調の研究では、座位での腕や指などの実験条件下動作が大部分を占めた。本研究は、実際のパフォーマンスと関わる知覚運動協調課題を用い、身体システムが自己組織化するシステムであることを調べた。Miura et al.(2011)の研究では、ストリートダンスの基本のリズム動作を用いて、アップ(膝伸展と音を同期)が動作周波数の増加に伴い、ダウン(膝屈曲と音を同期)に相転移することを示し、パフォーマンスと関わる全身動作も自己組織的に制御されていることが示唆された。また、非ダンサーは相転移してしまうが、ダンサーでは相転移しないことが明らかになった。しかしながら、Miura et al.(2011)の研究では、参加者はある動作パターンを維持しようとする意図をもって、自発的なパターン形成に抵抗していた。そのため、ダンサーが相転移に抵抗できたのが意図によるものなのか、学習によって内在するダイナミクス(intrinsic dynamics)が変化したのかは不明である。この点を確かめるために、連続的に周波数が変化するパラダイムを用い、参加者に自発的なパターン変化に抵抗しないように指示をした。その結果、アップからダウンへの相転移は、ダンサーと非ダンサー両群において観察された。各郡における相転移周波数を算出すると、ダンサーで約160拍/分、非ダンサーで125拍/分となり群間で有意に異なった。この結果は、意図の作用ではなく、学習前の段階の内在するダイナミクスが学習によって変化していることを示唆する。本結果はリズミカルな知覚運動協調の学習は、相転移を引き起こす内発的制約を克服する過程であることを示唆する。またその際の筋活動を記録した。その結果、ダンサーは太腿の前の筋肉と後ろの筋肉が交互に活動しているのにたいし、非ダンサーは共収縮していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
論文が一本掲載され、1つの招待講演を行った。以上から研究はおおむね順調に進展しているといえる。
本研究は個人内での知覚と運動の協調を非線形力学系理論により記述した。今後は個人間での研究に、本研究の結果を拡張させ、人間が集団で協調、または競合する際の知性について明らかにしていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
Motor Control
巻: 17 ページ: 18-33
Human Movement Science
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Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics
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The Journal of Strength & Conditioning Research
巻: (In press)
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_230808_j.html